土地の風土が創り上げた人々の匂い。旅先で見かけた、そんなちょっとした時の流れが僕は好き。


by iro-tavi

朱の国

a0078807_14485433.jpg何を思い、うなー(御庭)で立ち尽くしているのだろう。彼は夕刻近い太陽の光に照らされた正殿をじっと見つめていた。彼の目線の先にある朱色の正殿は、傾きはじめた太陽の柔らかい光で、刻一刻と深い色に変わってゆく。もともと琉球の文化は中国や朝鮮半島の影響が濃く、この朱の色を好んで使う。今、僕がいる首里城も、そのほとんどが朱の色を纏っている。朱。この色は遠い昔からこの地に根ずく土地の色なのだろう。そして彼は、この朱の色が変わりゆく今、遠い昔と今を重ねているのかもしれない。旅先で、その土地を感じるきっかけは、こんな偶然なことが多い。この旅はうなーで出会った1人の三司官がそのことを教えてくれた。

【沖縄・首里城にて】
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# by iro-tavi | 2006-07-09 16:02

No Border

a0078807_10161570.jpgプールの水面とモルディブの海、そして空がひとつになる。それは、自然と人工の対立的な考えを崩し、境界線を曖昧にしたグラデーションであり、自然との関わり合いを考えた現代的美学である。今、僕の目の前にいるカップルは、ただ何かを見つめ、おそらく会話すら交わしていないだろう。でも、お互いが通じ合っているのを確信しているように見える。それは日常の生活では難しいこと、でも、ここでなら、たやすく出来る。これが本来のリゾートの姿なのではないだろうか。楽園とは、境界線のない空間を創り、訪れた人を非現実的な世界へ誘う場所。そして、お互いの境界線をも取り外してくれる、そんなことを思い巡らせながら、一枚シャッターを押した。

【モルディブ・ヒルトンにて】
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# by iro-tavi | 2006-07-07 23:47

変らないもの

a0078807_10105920.jpg近代と古き佳き時代の調和が、日々進化を遂げるアジアの魅力の一つになっているのではないだろうか?
僕は今、窓際に頬杖をついて、外を眺めている老婆をみつめ、改めてそう思っている。
ここは、台北市内から車で1時間程の九分という町。独特のレトロな街並みを石畳の小道が通り抜け、軒先には提灯がぶら下がる。そんな九分に、どこか懐かしさを覚え、心が安らいでいく気持ちにさせられるのは、多分、僕だけではないだろう。そしてこの町に住む人々。人はその町に住み独特の匂いを創る。それは、人とその土地の同時進行の中で時間が育む歴史、きっと他にはない、そして、その土地でしか感じることの出来ないもの。そんな匂いが僕は好きだ。今、老婆は、九分という町の匂いが今も昔も変らないことを、僕に伝えているかのようだった。

【台湾・九分にて】
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# by iro-tavi | 2006-07-06 12:29

背中で語りかける

a0078807_1082076.jpg ふと、その老人に目がいった。ただ、椅子に腰を掛け、寡黙に海を見つめているだけだったが、僕は吸い込まれるようにレンズを向けていた。1枚・そしてまた1枚とシャッターを押す指先。そして、その指先と同調するかのように、レンズ越しに見える老人は私に何かを語っているかのように思えた。それは言葉ではない伝達、おそらく老人の身体から発する目には見えないもの、だけど感じることが出来るもの。その老人がどんな人生を歩んで来たのかは想像するに値しない、でも、歩んで来た人生そのものの軌跡がオーラを作り上げ、語りかけてきたように感じたのだ。「人生は顔に出る。そして、身体から放たれる」そんな感覚である。
それは、照りつける太陽の光で露出している肌が痛く感じるほどのフィリピンでの出来事だった。

【フィリピン・バリカサグ島にて】
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# by iro-tavi | 2006-07-05 14:56

10分間の恋

a0078807_16481686.jpg僕は今、中国・桂林から車で2時間ほどの龍勝という町に棚田の撮影で来ている。ところが僕を取り巻くのは鉛色に覆われた空、そして天から落ちてくる雫・・自ずと僕の撮影意欲も鉛色と化していた。そんな時、民族衣装を纏った女の子に出会ったのだ。彼女は「菩薩さま」さながらの顔立ち、いや「菩薩さま」そのもののような後光を放ち僕を一瞬にして包んでしまった。「完全にやられた!」それは鉛色の雲の隙間から、一筋の光が地上に射し込むかのようであり、沈みきっていた僕の気持ちを吹き飛ばしてくれた。僕は彼女にレンズを向け、一心不乱にシャッターを切りまくった。そうして、気がつくと曇り空の隙間から本当の太陽の光が彼女を照らしていたのだ。夢?奇跡?神様の贈り物?間違いないのは、僕にとっては彼女は正しく「菩薩さま」だったってこと。彼女を撮り終え、帰路の足取りが軽いのは言うに及ばない。が?!またもや足下には天から降る雫。そう、彼女を夢中に撮っていたあの時間だけ、天から光が射していたのだ。時間にしてたったの10分。たぶん彼女を撮りたいという本望がもたらした未知の力、そうこれが恋のパワーと言うものなのかもしれない。

【中国・龍勝にて】
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# by iro-tavi | 2006-07-04 10:26